お知らせ詳細

第64回玄海全国書道展はコロナ感染拡大の影響もあり、展覧会場ではなく玄海誌上展による開催となりました。
作品のサイズも例年の玄海展とは異なり
A:審査会員 および B:委嘱・無鑑査は 全紙一枚又は半切二枚
C:一般公募(段位者以上) 半切一枚
D: 一般公募( 級位者および新規出品者) 半紙一枚
での募集となりました。
第64回玄海展誌上展特集(1)として
玄海誌857号<2021-9月号>に掲載された 審査会員 および 委嘱・無鑑査 の作品の中から
当ホームページの運営にあたっている審査会員4名の作品を、本人のコメントを添えてご紹介いたします。
【加藤双涛】

作品コメント:
玄海ホームページのnoteの記事で「ウブントゥはおかげさま」というのを書きましたが、それを下敷きにしました。「福 ふく」の甲骨文字は、酒樽を両手で支える形象に由来します。酒樽を神前に供えて祭り幸いを求める意で、神の福録が人々に与えられる意味で、”さいわい、たすけ”ともよみます。
「ウブントゥ」はアフリカの哲学で、”人とのつながりが自分を救う”というのです。日本の”おかげさま”に通じるところがあります。
左右の甲骨文字は、左に呪具、右に呪祷の器を持つ形で、神に祈る、のち人のために祈ることから“佐・佑(たす)ける”となりました。
作品は、福の甲骨文字の両手の部分に左右の甲骨文字をあてはめて、”人を助けることが結局自分が助けられる”ということで「ウブントゥはおかげさま」を表現してみました。
【中川雨邨】

作品コメント:
今回の作品は半切二枚に各三行を行草体(九十文字)で書きました。
多字数を、文字間・行間・大小・潤渇に配意しました。
《 釈 文 》 帝京篇(七言古詩) 駱賓王詩
文を校す天禄閣。 戦を習はす昆名水。
朱邸平臺に抗く 黄扉戚里に通ず。
平臺戚里崇牖を帯び 金を炊ぎ玉を饌して鳴鐘を待つ。
小堂の綺帳三千戸。 大道の青樓十二重。
賓蓋雕鞍金絡馬。 蘭窓繍柱玉盤龍。
繍柱璇題粉壁映じ。 鏘金鳴玉王侯盛なり。
王侯貴人近臣多し。 朝に北里に遊び暮に南鄰。
【野水吟秀】

作品コメント:
今回は私の大好きな詩人である陶淵明の五言古詩を撰文して楷書にて書きました。
この詩文は、讀山海経というタイトルで、山海経という地理書を陶淵明が好んで
読みその思いを詩文にしたものです。
周から秦の時代に書かれたとも言われ、作者は分かっておらず、後々の時代に更に加筆され、中国を代表する書物の一つでした。
私もこの山海経は、中国の神話とも言われてそれぞれの地域での言い伝えをまとめてあり その地域の風光明媚な世界を紹介していることもあり、お気に入りの書物でもあるため、今回作品にしてみました。
【池山光琇】

作品コメント:
私は中学生のときから書道をはじめましたが、一番初めに師事した先生が篆刻や刻字をやられている方だったので、最初に隷書を教え込まれました。
その後、これまで色々な書体を勉強してきましたが、展覧会などに出品するときはやはり隷書の作品を好んで書きます。
今回は、清代の書家 楊峴 が書いた「臨西嶽華山廟碑」を参考にして、素朴な古隷や波法の完成された曹全碑などよりはちょっと時代が進んだ洒脱な感覚のある隷書に挑戦してみました。